〜たしかな昔、けれど過去〜
何気ない日常の中で、ほんの一瞬。
ほとんど忘れていると言っても過言ではないくらいの「恋」を思い出すことがある。
もう数年前か。
私にもかつて、好きになった男性がいた。
最近の子たちに比べたら遅くて、20歳を過ぎた時にはじめてできた彼。
普通の恋人同士。
いろんなところにデートに行ったし、話もしたし、笑顔を見せあった。
もちろん、恋人らしい触れ合いもあった。
その時は、私にもこんな瞬間が訪れるんだと、まるで「奇跡」のように感じていた。
当たり前の日々が、来る日も来る日も訪れ、そして過ぎ去った。
気がつけば、もう数年前だなんてね。
過去のこととして受け止めつつも、目を閉じれば、昨日のことのように思い出される。
とくに思い出すのが、彼の特徴。
肌、髪質、標準体型といった視覚的なもの。
そして、彼特有の体臭。いつも安定したその香りが、私はすごく好きだった。
エピソードも色々あるけど、激しく喧嘩したとか、衝撃的な記憶がより鮮明だ。
あの人とは、色々あった。
もういい加減忘れる、忘れなきゃと思っているけど、案外忘れないね。
しばらくは、私の中にとどまっているだろう。
めまぐるしく変化する日々の中でも、これだけは変わらない。
時々近況が気になるけど、すぐにそれは右から左へ。
きっと、いつまでもそんななんだろう。